ここでは、危険な心電図※を6つ紹介します。ここで紹介するものは見つけたらすぐに医師に報告すべき波形ですので、波形の特徴(見つけ方)と対処方法を学んでいきましょう。
※一般的に使用されている心電図モニターの 3 点誘導法
ただちに命にかかわる波形については、「超危険な心電図 4選」で紹介していますので、そちらをご覧ください。
目次
- Ⅰ 心房細動(Af)
- Ⅱ 心房粗動(AFL)
- Ⅲ 発作性上室頻脈(PSVT)
- Ⅳ 完全(3度)房室ブロック
- Ⅴ 2度房室ブロック
- Ⅵ 洞不全症候群
- まとめ
心電図を見ることで、心臓の電気的活動を知ることができます。
電気信号は正常時、①洞結節→②房室結節→③ヒス束→④右脚、左脚の順に伝わっていきます。心筋が電気信号によって刺激されることで興奮し、脈を打つことができるのです。
①洞結節から②房室結節の間には心房が、②房室結節から④右脚、左脚の間には心室があるので、心房→心室の順で興奮が伝わるのがわかると思います。
心電図には、P、Q、R、S、Tなどと波に名前があります。超ざっくりですが、ここでは
P波・・・心房の興奮
QRS波・・・心室の興奮
と覚えておいてください。
Ⅰ 心房細動(Af)
心房細動(Af)は、心房のいたるところで勝手に命令が出てしまい、心室が不規則に収縮してしまう状態です。
心電図の特徴
心房からめちゃくちゃな命令信号が出るので、P波(心房の興奮)を正確にとらえることは出来ません。
また、心房からのめちゃくちゃな命令が心室に伝わるので、QRS波(心室の興奮)は、不規則(早かったり遅かったり、いつも通りだったり)となります。
そのため、心電図は
・P波は見られない。(大きさと間隔がバラバラな小さな波(f波)が出現。)
・R-R間隔がバラバラ
・心拍数は頻脈or正常or徐脈

となります。
この他にも、・QRS幅は狭い という特徴もあります。
対処
心房細動(Af)の場合、患者さんは動機や息切れを訴えることが多いです。上記で説明した通り、頻脈もしくは徐脈となることもありますので、症状がある場合は
患者のバイタル確認 ・ドクターコール
しましょう。
症状がない場合でも、速やかに医師に報告が必要です。心房細動により心房内で血流がよどみ、血栓が形成されやすくなっている状態だからです。
Ⅱ心房粗動(AFL)
心房粗動(AFL)は、心房からの命令が心房で回り続けてしまうことで、心房が300回/分で収縮してしまう状態です。心室には数回に1度の頻度で命令が伝わります。
心電図の特徴
心室粗動となると、心房がものすごい速さで収縮しています。心室には一定の速さで命令に伝わるため、R-R間隔は一定となります。
そのため、心電図は
・R-R間隔は一定
・F波が見られる(心房がものすごい速さで収縮しているため)

となります。
この他にも、・QRS幅は狭い という特徴もあります。
対処
・患者の状態確認
が必要です。血栓形成リスクもある(一応心室には一定間隔で命令が伝わり収縮しているため、心房細動よりは血栓形成リスクは低いとされています)ため、
・医師への速やかな報告
も必要です。
f波とF波
f波は無秩序な心房興奮によって出現する、不規則な基線の動揺です。
F波は心房粗動時に出現する鋸歯状の波形です。心房内で興奮が旋回することにより発生すると考えられています。
Ⅲ 発作性上室頻脈(PSVT)
発作性上室頻脈(PSVT)は心室に伝わった命令が、心房→心室→心房とぐるぐる回り伝わっている状態です。多くの命令が伝わってしまい、頻脈となります。
心電図の特徴
・R-R間隔は一定で頻脈
・QRS幅は狭い

という特徴があります。
また、心室に伝わった命令がぐるぐると回っている状態であるため、
・P波(心房の波)は見られない
ことが多いです。
対処
発作性上室頻脈の場合、患者さんは動悸を訴える場合が多いです。まずは、
・患者の状態確認
をしましょう。発作性のため、患者さんに息をこらえてもらうことで、しばらくすると落ち着くことが多いです。
症状が治まらない場合は
・ドクターコールで指示を仰ぐ
必要があります。症状がない場合でも、
・医師への報告
が必要です。
Ⅳ 完全(3度)房室ブロック
完全(3度)房室ブロックは、心房に伝わった命令が心室に全く伝わらない状態です。心室には全く命令が伝わりませんが、心室には自動能があるためゆっくりですが動きはします(30回/分程度)。
心電図の特徴
心房までは命令が正常に伝わっています。なので、
・P波(心房の興奮)は正常 です。
一方、心室には全く命令が伝わっていませんが、自動能によってゆっくりとしたテンポで興奮は起きているので
・R-R間隔が広い (徐脈)

という特徴があります。
P波とQRS波は無関係に発生するので、
・PQ時間がバラバラ
という特徴もあります。
対処
徐脈となるため、患者さんは脳虚血状態やめまい、失神をおこすことがあります。
・患者の状態を確認 し、
必要時、 ・ドクターコールし支持を仰ぎましょう。
症状がなくても、ペースメーカーの適応となりますので
・医師への速やかな報告
が必要です。
Ⅴ 2度房室ブロック
2度房室ブロックは、心房に伝わった命令が、心室に伝わったり伝わらなかったりする状態です。モビッツⅡ型(QRS波が突然消える)やウェンケバッハ型(PQ間隔が徐々に伸びていく)があります。
心電図の特徴
心房までは命令が正常に伝わっています。なので、
・P波(心房の興奮)は正常 です。
しかし、心室には命令が伝わったり伝わらなかったりすることがあるため
・QRS波が見られる部分とみられない部分がある
という特徴があります。

モビッツⅡ型の場合
・QRS波が見られる部位のPQ時間は一定
です。
対処
徐脈となることがあるので、注意点は完全(3度)房室ブロックと同じです。
・患者の状態確認 をしましょう。
モビッツⅡ型の場合、ペースメーカーの適応となることがあります。
・医師への速やかな報告
も必要です。
Ⅵ 洞不全症候群
洞不全症候群は、数秒間心房に命令が伝わらなくなった状態です。
心電図の特徴
数秒間だけですが、心房に命令が伝わっていない状態となりますので
・数秒間P波もQRS波も見られなくなる
という特徴があります。

対処
数秒間ですが脈が止まりますので、患者さんはめまいを訴えます。停止時間が長ければ、失神やけいれん等の症状がでることもあります。ですのでまずは、
・患者の状態を確認 し、
失神やけいれん等の症状がある場合は、当然ですが
・ドクターコール
が必要です。
まとめ
いかがでしたか?心電図は奥が深く、ここではホントに軽くしか触れていません。ですがまずは患者さんが危険か危険じゃないかを判断できるようになることが重要だと思います。患者さんの一番近くにいる看護師が「何かおかしい」を発見できることはとても大切です。ここでのことが少しでもお役に立てれば幸いです。
ただちに命にかかわる波形については、「超危険な心電図 4選」で紹介していますので、そちらをご覧ください。
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